いわゆる黒目の表面には透明な角膜という組織があります。普段意識してないけど、これが透明だから物がきれいに見えているのです。この角膜が病気になって濁ったら大変です・・・。
いわゆる黒目の表面には透明な角膜という組織があります。普段意識してないけど、これが透明だから物がきれいに見えているのです。この角膜が病気になって濁ったら大変です・・・。
眼球は強膜という厚くて丈夫な白い膜で壁を作り、ボールのような球形となっていますが、前方だけは少し飛び出ていて透明になっています。その部分を角膜といい、透明であるためそこから角膜の下の組織が見通せ、アジア人では黒く見えます。つまり、いわゆる黒目を覆っている組織が角膜なのです。
眼で物を見る仕組みは、この角膜を通過して屈折した光が、眼球後方の網膜に焦点を結ぶことで成り立ってます。角膜は眼球を形作る壁の一部であり、光を眼球内に取り入れる採光窓であり、同時に光を屈折させ網膜に焦点を結ぶレンズの役割も持つ組織なのです。(光は角膜と水晶体で屈折します。)
角膜の病気でその透明性が失われたり、形が変化してしまうと、視力が損なわれることになります。
ぶどう膜炎は合併症として、緑内障、虹彩後癒着(水晶体と虹彩がひっつく)、白内障、網膜の障害などの合併症が高い頻度で起こります。これらの合併症は、重篤な視力障害につながることがあるので、その早期治療が大切です。
角膜は透明とはいっても、ガラスやプラスチックとは違い、もちろん生きた細胞でできています。常に酸素や栄養が必要ですし、表面にあるためゴミなどによる傷害や細菌・ウイルスなどが侵入する危険にさらされています。
通常、酸素や栄養は血液によって細胞に運ばれ、外部からの異物の侵入は皮膚でブロックし、侵入したものは血液中の白血球などが排除します。ところが角膜は透明でないと意味がないので、血管も皮膚もありません。ではどのようにして酸素や栄養を取り入れたり、外部からの刺激から身を守ったりしているのでしょうか。
コンタクトレンズ障害
コンタクトレンズはきちんと使用していれば安全ですが、そうでないとさまざまな形の感染を引き起こす以外に、次のような問題も生じます。
角膜は血管がなく上皮を通してのみ酸素を取り入れていますので、コンタクトレンズの使いすぎは酸素不足の原因になります。生体はそんな状況を改善しようとしますので、本来角膜にはあってはならない血管が、周辺から伸びてきて透明な角膜に侵入してきます。この血管は一度できると消えることはなく、瞳孔の位置まで伸びると視力が低下します。さらにこのような血管が侵入した角膜は角膜移植手術後の拒絶反応が起きやすく、手術の成功率が低くなってしまいます。
コンタクトレンズの不適切な使用が原因で結果的に重度の視力障害に至る人は、国内で毎年数百人に上ります。洗浄が不十分、使用期限や装着時間を守らない、装着したまま眠る、検診を受けないなど・・・このような間違った使い方は今すぐ改めましょう。
なおソフトコンタクトレンズはハードコンタクトレンズに比べ、装用感が非常によいですが、角膜の感覚が鈍るので傷や病気に気付きにくい、レンズが水を含んでいるので細菌などが繁殖しやすい、サイズが大きいので低酸素になりやすい、涙液の交換率が非常に低いなどの欠点があり、特に注意が必要です。
角膜感染症のおもな症状は、痛みや充血、涙目、視力低下などですが、感染した細菌やウイルスが除去されればいずれ痛みや充血はなくなります。しかし、細菌におかされてできた潰瘍による濁りや瘢痕が実質に生じるとそれはとれません。その位置が瞳孔に重なってると、視力はもとにもどらず、かすんだような見え方になってしまいます。
また感染そのものの経過が長引くと、本来は無血管である角膜内に血管が入り込んでくることがあります。この血管ができると、角膜移植が必要になったときに、その成功率が下がってしまいます。
角膜移植
角膜の透明性が失われそれが回復しない場合には、角膜移植による治療が行われます。角膜は移植治療が行われている組織の中で、最もその歴史が長く、成功率が高い組織です。その一方で、提供される角膜が少ないために、なかなか手術を受けられず長期間順番を待っている患者さんが大勢います。
現在はアメリカ人ドナーの角膜を用いて手術をするシステムもあり、状況はやや改善していますが、まだまだ供給は需要の10分の1程度と思われます。
人工角膜・角膜再生
角膜移植のドナー不足を一気に解決するのではないかと注目されている人工角膜。その開発は長年いかに生体になじませるかの挑戦でした。どうしても感染などの理由で短期間でだめになってしまうのです。現在も開発は続けられており、まだ実験段階ですが、徐々に長期間持続させる技術ができてきています。
また近年、角膜内の細胞を培養して角膜を再生させる技術が進歩し、急速に現実味を帯びてきています。再生角膜による角膜の部分的な置き換えは成功し、今後は角膜全体ではなく必要な部分のみを置き換える手術が主流になるかもしれません。