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ドライアイ

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ドライアイ

ドライアイってよく聞くけど、実際はどんな病気なのでしょう?
生活習慣病ともいえるドライアイについて詳しくみてみましょう。


 
 

眼の一番表面には何があるのでしょうか?それは涙(涙液)です!

私達のからだは皮膚で覆われています。皮膚は、外部からの異物の侵入を阻止し、からだの水分の蒸発を防ぐなど、大切な働きをしています。
ところが物を見る器官である眼球は、光を素通しさせないと役割を果たせないので皮膚がありません。眼球表面はごく薄い涙の層によって守られているのです。
涙(涙液)は眼球表面(角膜・結膜)を覆い、それを潤し、眼を守るバリアとして働いています。涙の量が減ったり、成分が変化すると、その働きが不十分になり、角膜や結膜が乾燥し、傷つきます。これがドライアイです。といっても、その状態を「目が乾く」と感じる患者さんはそれほど多くははく、目が疲れる、目がしょぼしょぼするなどの目の不快感が主な症状です。疲れ目を訴えて眼科を訪れる人の6割はドライアイが関係しているという調査もあります。


 
 

こんな症状はドライアイかも…

目が疲れやすい・目がしょぼしょぼする・目が乾いた感じがする・目がゴロゴロする・目が重い・目が痛い・なんとなく目に不快感がある・目ヤニがでる・目が赤い・まぶしい・目がかゆい・物が霞んで見える・涙が出る、5つ以上あてはまればドライアイかもしれません。


 
 

涙の働き、瞬きの役目

眼を潤し続けるための涙の工夫

ドライアイを知るためには、涙の仕組みを理解しておく必要があります。実は涙は3つの層に分かれていて、最も外側は「油層」といい、上下のまぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌されている、油性の液体の層です。油層はその下の水層(水を主成分とする層)が、蒸発したり眼からこぼれるのを防いでいます。
「水層」は涙の大半を占める涙液の層で、涙液は上まぶたの裏側にある涙腺で作られます。涙液は眼球の粘膜を潤すだけでなく、角結膜に栄養を届けたり、細菌の侵入を防いだり、粘膜にできた傷を早く治す働きをしています。
角結膜に一番近い部分は「ムチン層」です。ムチンは結膜や角膜から分泌される粘液です。このムチン層が角結膜の表面を覆っているために、その上の水層が水の表面張力などの影響を受けずに、すき間なく広がることができます。

眼を潤すための瞬きの役割

涙液(水層)は、このように油層とムチン層に挟まれることで、眼の表面を常に覆うことができるのです。しかし、涙の層を維持するために、もうひとつ欠かせない要素があります。それが瞬きです。
瞬きはまず、角膜を刺激し涙腺からの涙の分泌を促す働きをしています。また、涙の膜はなにもせずに10秒ほど過ぎると、所々にすき間ができて角結膜が露出した部分が生じてしまいますが、瞬きをすることで涙が角結膜全体に均一に押し広げられ、すき間ができるのを防いでいます。さらに、汚れた涙を涙点(目頭にある涙の排出口)へ運ぶのも、瞬きの働きです。

 
 

なぜ目が乾く?ドライアイの原因は?

生活習慣病としてのドライアイ

ドライアイになる最初の原因は眼球表面の涙液の量が減ることですが、それには涙液の分泌の低下と、涙液の蒸発が多くなることの2つが影響しています。その背景として、次のような要因があげられます。

  • 1. 空気の乾燥ー空気が乾燥していると、目の表面から涙液が蒸発しやすくなります。このためドライアイの人の多くは、秋から冬にかけての季節の変わり目に症状が強くなります。本来は湿度が高い夏場も、クーラーの利いた部屋にいると目が乾きます。
  • 2. 瞬きが少ないー意識しなくても、普通3秒に1回くらい瞬きをしますが、何かに集中してると、瞬きの回数が減ります。例えば読書で6秒に1回ぐらい、パソコン操作で十数秒に1回程度になります。その結果、涙液の蒸発が進む反面、分泌は低下し、涙の膜が途切れてしまいます。最近はパソコンや携帯電話などの普及により、VDT症候群と呼ばれる状態の人が増えています。
  • 3. 瞬きが不完全ー瞬きの瞬間しっかりまぶたを閉じていない人がいます。そのため、瞬きをしても眼球表面の下の方はいつも潤わないことになります。眠っているときも薄目を開いている人や、コンタクトレンズをしている人に多い傾向があります。
  • 4. コンタクトレンズの装用ーコンタクトレンズが水をはじくために、目が乾燥することがあります。また、角膜が覆われてその感度が鈍くなることや、瞬きが不完全になることで、涙の分泌が低下します。レンズの汚れや傷が涙の膜を不安定にしたり、結膜のムチン分泌を低下させることもあります。

以上のような、環境要因の影響が強いドライアイは生活習慣病と言えますが、ドライアイの原因はこれら以外にもあります。

VDT症候群

VDTとは、visual display terminalの略で画像表示端末、つまり、パソコンやテレビ、携帯電話などのことです。これらの操作時は、画面を見ることに集中し、瞬きの回数が極端に減ったり、視線を激しく移動させるため、目に大変負担となり、疲れ目やドライアイを引き起こします。また頭痛やめまいが起きることもあります。

ドライアイのそのほかの原因

  • 1. シェーグレン症候群ー中年の女性に多い病気で、目や口、鼻などの粘膜が乾燥し、関節痛が起きることもあります。涙はほとんど分泌されず、強いドライアイの症状が現れます。
  • 2. マイボーム腺閉塞ーマイボーム腺は、油層の成分を分泌する所です。マイボーム腺が何らかの原因で詰まると、油層の形成が不完全になり、涙液の蒸発を防ぐことができません。
  • 3. 結膜炎などー近年患者数が増加しているアレルギー性結膜炎などでも、結膜のムチン分泌が減り、ドライアイを招きます。

乾いた目が、さらにドライアイを進行させる:ドライアイの悪循環

目が乾く原因はこのようにいろいろありますが、実際には複数の要素が重なり合った結果ドライアイになったり、その症状を悪化させていることが多々あります。
目が乾く主要原因が何であっても、涙の膜が不安定な状態では、角結膜が傷つきやすくなります。いったん角結膜が障害されると、ムチンが分泌されなくなるので、さらに涙の膜が不安定になって角結膜の障害が進行するという、ドライアイの悪循環が生じてしまいます。


 
 

ドライアイの診断、原因を調べる検査

  • 1. シルマーテストードライアイの診断ではまず、涙がどれくらい不足しているかを調べるシルマーテストを行います。下まぶたに濾紙を挟んで5分後に10ミリメートル以上濡れていれば正常、5ミリメートル以下だとドライアイを診断されます。
  • 2. ローズベンガル染色ーローズベンガルという色素で角結膜の状態を調べる検査です。ムチン層のない乾いた部分が赤く染色され、その部分の角結膜では、涙の膜が途切れやすくなっていることが分かります。
  • 3. フルオレセイン染色ー角結膜が傷ついていないかを調べる検査です。角結膜に傷があると染色されます。
  • 4. このほか、涙の膜の安定性を調べたり、マイボーム腺を調べる検査なども行われます。

 
 

ドライアイの治療!

目の乾燥を防ぎ傷ついた角結膜を修復するには、どんな方法があるのでしょうか。

点眼薬で目を潤す

人工涙液を点眼して直接、目の表面を潤すことが、ドライアイの基本的な治療法です。
点眼薬は通常5分ほどで吸収・排出されてしまうので、ドライアイ治療には、なるべくこまめに点眼します。
点眼回数が非常に多くなる場合には必ず防腐剤が入ってない人工涙液を選びましょう。防腐剤が入っているものは、使いすぎると防腐剤による角結膜障害を引き起こす危険性があるので、1日7回くらいまでにしましょう。
人工涙液以外には、保水効果のあるヒアルロン酸という薬も使われます。また眼軟膏が併用されることもあります。

涙点を塞いで涙の排出を減らす

涙の分泌量が少なくても、涙点を塞いでしまえば、涙を眼球表面に長く留めることができます。その方法として、涙点に小さなプラグ(涙点プラグ)を差し込んだり、涙点を閉じる手術があります。人工涙液では補えない、本来の涙の成分も補給できるので、高い効果が期待できます。

視環境を見直しましょう

ここまで紹介した治療法は、主に眼科医による処置や処方ですが、ドライアイは生活習慣病という側面がある病気です。すなわち自分自身で普段の「視環境」を整えることも大切です。

  • 1. 視力の再確認ー視力が低下していたり、眼鏡が合っていないために目を凝らしていませんか?そのために瞬きが減っている可能性があります。ドライアイ治療には視力の再チェックも欠かせません。
  • 2. 画面は見下ろす位置にー上を見ると自然にまぶたが大きく開き、それだけで涙の蒸発が早くなります。パソコンのディスプレイはなるべく低い位置に、テレビも床に近い方がいいでしょう。
  • 3. 空調の風や湿度をチェックー風が直接目に当たると、目はすぐに乾燥してしまいます。エアコンの風向きに注意しましょう。また、からだが心地よいと感じる湿度は意外に低く、ドライアイにはよくありません。できるだけ加湿をこころがけましょう。
  • 4. 意識して瞬きをするー上瞬きの回数を増やすと共に、しっかり瞬きする(瞬きの瞬間に完全に目を閉じる)ように意識しましょう。
  • 5. こまめに目を休ませるー上目を酷使する作業では間に休憩を挟みましょう。暖かいタオルなどで目を温めるのもよい方法です。

定期検査を忘れずに

ドライアイは知らず知らずのうちになっていたり、ソフトコンタクトの使用などによって重症になるまで気付かない場合などもあります。
また一度ドライアイと診断されても、状態が変化したり、別の病気がかくされている可能性もあります。
治療によって症状がよくなったとしても、検査は大切ですので、変化があるときはもちろん、普段から定期的な診察を受けるようにしましょう。